砂糖よりも甘い君
「紅華」


「!?」


試着室の外から凛斗様が声をかけてくる。


「最近、お前と一緒に居られなくて寂しかった」


「え……」


いきなり何を言い出すのか。


ドキッとして顔が赤くなって息が上手く出来ない。


「俺はお前の作ったケーキが好きで、そのケーキが自分の満足いくものに出来た時の嬉しそうなお前の顔が好き。今日お前の事誘ったのはさ、いつも俺が疲れてる時にケーキ作って持って来てくれる紅華にお礼がしたかったからなんだ」


「……っ」


「俺にはいつだって紅華の事が可愛く見えてるよ。だからちゃんと自分の事、認めろよ」


そう言われて私は泣きそうになった。


どうしてそんなご褒美みたいな事を言ってくれるんだろう。


私は何もしてない。


私を助けてくれたのは正人さんと凛斗様なのに。


私は深呼吸をして試着室から出た。


私の姿を確認すると凛斗様は納得したように笑った。


「うん、可愛い」


「……っ」


「このままどっか行こっか」


凛斗様は私に手を差し出すと、そのまま私を連れ出した。


私の着ている服の代金も払ってくれて、私が知らない行った事のないような店に連れて行ってくれる。


オシャレなコーヒーショップ、可愛い雑貨屋、沢山お菓子が置かれているお菓子屋さん。


どれも見ているだけで創作意欲が湧いてくる。


きっと凛斗様が考えて連れてきてくれてるんだ。


凛斗様が買ってくれた可愛いハリネズミのマスコット。


一生大事にしよう。


一日凛斗様と一緒に出歩いて、私達はマンションに戻った。


私のマンションに着くと凛斗様は私の手を離した。


「それじゃあ、また明日」


「はい……」


「今日は俺のワガママに付き合ってくれてありがと」


「わ、私の方こそ!沢山楽しい事を教えてくださり、感謝してます!」


「そう。じゃあ、また遊びに行こうな」


「!!」


「ドラマの現場に持って行く差し入れ、期待してるから」


意地悪く笑うと凛斗様は帰って行った。


本当に、カッコいいな……。


ドキドキする胸を押さえて、私もマンションに入った。

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