みだらな天使
一人で入ると広々としていた湯船は、二人で入るとちょうど良い広さだった。




私は朔に背を向ける格好で、もたれかかるようにしながら湯船に浸かる。




そんな私を、朔は背後から包み込むように抱きしめる。




「今日は学校どうだった?」




こうして、私との会話の時間を大切にしてくれる朔が、愛おしくてたまらない。




「今日は彼に送ってもらわなかったの?って聞かれた。みんなよく見てるなあ…」



「ははは!一躍人気者だな、奏は。」




朔の髪の毛から落ちる滴が肩に当たる度、鼓動が早くなる。




「人気なのは私じゃなくて朔だよ。みんな朔が見たかったみたいだもん。」




「え?俺??」




少し振り向いて朔を見ると、キョトンとした表情で首を傾げている。





…ダメだ、この男。



モテる自覚がまるでない。





「……あ、そういえば…」




クラスの男子に言われたことを思い出し、そう呟くと…




「ん?どうした?」




朔に優しく尋ねられる。



< 78 / 147 >

この作品をシェア

pagetop