だから何ですか?Ⅱ【Memory】




「待ってろ、」


「っ・・・」



ポンっと軽い手の感触をフード越しに感じ、落とされた言葉に『はっ?』と顔をあげれば既に彼の後ろ姿だ。


目の前のコンビニにスタスタと入っていく背後をポカンと見つめ、静かにペットボトルのキャップを閉めてベンチに置くと。


うん・・・、よし、帰ろう。


待つ義理もないしな。


彼だってもしかしたら引き際分からず困っての時間かもだし。


帰ろう。と、名残惜しさもなく足を踏み出し数歩。


いつもであるならそのまま歩み進め去る事だろう。


それでも異例にも歩みを止めてベンチに戻ってしまったのは決して彼が気になってとか可愛い理由じゃなくて。


何で・・・、何で無用心にも鞄置いていきくさった!?


舐めてんのか?


早朝からカツアゲとかある都会だぞ?


都会舐めてんのか?


と、善意に対しての心ばかしのお返しに善意が疼いたというのか。


よくわからないけれどこんな私に信用おく様に鞄をベンチに置いていった姿。


私がそれ持って逃げたりしたらどうするつもりなのか。


そんな話は珍しくない。


善意に必ずしも善意が返されるとは限らないのに。


・・・まぁ、少なくとも、私は悪意を返したりはしないけど。




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