だから何ですか?Ⅱ【Memory】
どうせ体もまだ怠い。
そんな理由も追いついてベンチに身を預けて息を吐く。
気がつけば日の出を迎えていた空は明るい。
彼が戻って来たならさすがに家に戻ろう。
いつ人が増えてもおかしくない時間帯になってきてしまっている。
それを予告するかのように目の前を走り去る車にゾクリとしながら見送ったタイミング。
「ほらっ、何食えるか分かんなかったから、とりあえずパンからおにぎりから適当に、」
ガサリと落とす様に膝に乗せられたコンビニ袋に意識を戻され、内容を示す声に目の前に立つ姿を見上げた。
カチンッと耳に響く金属音。
髪の隙間から捉えたのはようやくまともと言える彼の姿だ。
スーツもネクタイも若々しく新しい。
髪は・・・地毛なのかパーマなのか毛先が緩くウェーブを描く。
かといってチャラチャラした感じではなく、綺麗に真面目にセットされている姿は好感的だ。
顔もモテるタイプの造りじゃないだろうか?
そんな姿が咥えた煙草にジッポで火を着ける瞬間で。
あ、カメラ・・・。
なんて、無意識にポケットを漁った自分に驚いた。
それでも取り出す前には何をしているんだと我に返って手を離す。
そんな合間に火を付け終わり、フゥーと空気に紫煙を漂わす彼の視線はどことも言えない物を捉えている。