だから何ですか?Ⅱ【Memory】
何を考えて、どう動いたのか。
時折意識を回復させて取り込む視界の記憶。
いつも通り仕事で賑わうフロアを抜けて。
エレベーターの文字盤を慣れた手つきで操作する。
独特な浮遊感に身を任せる。
点々と、動画ではなく写真を繋ぎ合わせる様な歪な記憶だ。
その記憶の中で自分の声を発した覚えはまるでない。
下手に口を開けば自分の葛藤が今にも爆発して零れるんじゃないかと、僅かに残る理性で抑え込んで。
それでもどんどんと進む度に、上昇する度に、
亜豆に近づく度に・・・濃さが増してその重苦しさや焼け落ちる様な感覚に表情が歪む。
余裕がない、冷静でない、
まんまと三ケ月の策にハマって馬鹿みたいだ。
そんな風に全部全部分かっているのだ。
分かっていて尚・・・抑制できない負の感情であるから苦しいと思うわけで。
亜豆に会いたいと思う反面・・・、
亜豆に会いたくないと心がざわめく。
会って・・・顔を見たら何をしでかすのか嫌でも予測が立つ。
予測が立って、それを【したい気持ち】と【したくない気持ち】のせめぎ合い。
その勝負を傍観するように無の感覚で立ち尽くしていたけれど、エレベーターの到着音が響いた事で意識の回帰。
ふわりと開いた扉から冷たい空気が入り込むも、今はそんな事に感覚は働かない。