だから何ですか?Ⅱ【Memory】
複雑な笑みでフゥッと一息。
「気をつけろ。・・・多分機嫌が悪い」
そんな忠告の言葉にニッと口の端を上げて見せると、やれやれと言いたげな脱力した笑みで今度は社内電話を手にした海音が、
「車、下に用意しておいてやるよ」
そう告げるとすぐに手配の電話を済ませてくれる姿に、今は感謝は程々。
全部片付いたら酒でも驕るか。と思いながら足早に社を出て待ちかまえていた車に乗りこんだ。
それが・・・・少し前。
そうして、今不機嫌な獣と対峙しているわけだ。
相変わらずの威圧感、存在感。
見られているだけでどんどんと武装を解かれている気がする。
目の前のソファにどかりと王者の様にある様は冷酷な暴君にも見えて。
全体的に黒い印象だ。
薄らストライプ地の黒に近いグレーのスーツ。
その中のシャツはまた黒で、ポイントとなるネクタイはスーツより僅かに明るい光沢あるグレー。
緩やかな癖のある髪も黒ときていて、そんな色調であるからか余計に切れのある目の緑が鮮明だ。
「力を・・・貸す?俺が君に?何故?」
意味が分からない。
表情を微塵も動かさず瞬きすらしない姿は隙がなさすぎて、気を抜けば一瞬で飲まれて怯んでしまいそうだと息を飲む。