だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「アレ、一本この2人に譲って」
そんな言葉を店員に一言。
特別指し示すでもなく【アレ】と言う一言に一瞬焦りを見せた店員も、急いで奥の扉に入り込んで大した時間もせずにワインのボトルを持ってくる。
なんか奥から大事そうに持って来られた。
えっ、コレ、ガチで貴重品とかそう言うやつじゃないの?と何も言われずとも感じてしまう。
そんな中で『ご馳走様』とまだ貰ってもいないのに響かせる亜豆は強者か。
本気でなんか奢らせたぞこいつ。と驚愕ばかりの場面だったけれど、実際に手元にそのワインを包装して渡されれば、
「あ、あの・・・ありがとうございます」
すでに用事は済んだと背を向けていた姿に、慌ててお礼の言葉を投げかければ静かに足を止めて振り返ってくる。
それでも俺の事は一瞥。
すぐにその緑の双眸が捉えたのは亜豆の方で、
「礼とかいらない。・・・・亜豆、早く借りを返させろ」
そんな一言。
まったく俺には意味の分からない一言に、言われた亜豆をふりかえるも男を見送るばかりで声すら発さない。
そのまま入店時と同じようにカランとベルを鳴らしながらこの空間から去って行った独特な雰囲気の男。