幸せの種
食堂でお盆を持って待っていたら、琉(りゅう)君が声をかけてきた。
「おはよ。千花、お盆の色、間違ってるぞ」
「え? あ、そうだった。もうわたし、中学生になったんだ」
慌ててお盆を持ちかえる。
小学生と中高生は、お盆の色によって配膳される量を調整されることになっていたから。
ウインナーが二本増えるとかそんな程度だけれど、ちょっと嬉しい。
「千花が中学生だなんて、信じられねー」
「わたしも琉君が受験生だなんて、信じられなーい」
「……あんなにチビだったのにな」
お盆を片手に、琉君がわたしの頭をポンポンしてきた。
いつまでたってもちっちゃな子ども扱いで、失礼しちゃう、なんて言い返そうと思って琉君の顔を見た。
バカにしているような訳でもなく、見下している訳でもない……。
見上げた先にあったのは、照れているような、穏やかな笑顔。
この目はどこかで見たことがある。
高橋先生が、よくこういう顔をしていた。
琉君と高橋先生は、ちょっと似ているところがあると思う。