幸せの種
「中学生、そろそろみんな行くよ~」
玄関が開けられ、制服を着た中学生がぞろぞろと歩きはじめる。
わたしはできるだけ女子の列から離れて歩くようにしている。
不自然にならないように、話しやすい琉君のそばへ行こうと、ちょっぴり早歩きした。
他の男子よりかなり背の高い琉君は、見つけやすいので便利だ。
琉君もちょっとゆっくり歩いてくれているみたいで、すぐに追いついた。
ちしま学園では、基本的に登下校は学園生同士まとまって行動することになっている。
これは、脱走してしまうことを防ぐため、というのも理由のひとつ。
琉君とわたしも、小学校時代に脱走したことがあったけれど、あれも下校途中だった。
学園の先生だけじゃなく、小学校の先生達も必死になって探してくれたって聞いて、翌日、園長先生と琉君と私で、校長室に行って謝ったっけ。
園長先生にこっぴどく叱られたけど、今となってはいい思い出だ。
小学校と中学校は反対方向にあったからできなかったけれど、わたしが中学生になった今は、琉君と一緒に登校できる。