このチャラ男一途につき…
「俺の……だ」
これが欲しかったのだと、乱れ落ちている吐季の前髪を指先に絡めながら顔に触れる。
そのまま、泣き黒子をなぞり、改めて本当に好きだという感情に満ちていたタイミングだ。
「……っとに」
「……え?」
「ちょいと今のは反則だわ」
「はっ?…っ__」
いきなりなんだ?と眉を顰めるより早くだ。
それまで安定していた体がぐらりと揺れて、自分の意志とは関係なしに未知の室内へと運ばれていく。
薄暗い廊下を慣れた感じに止まることなく、扉を開く手際さえ無駄な動きを全て省いているような。
ってか、電気ぐらいつければいいのに。
それに下ろしてくれれば普通に歩いたんだけど。
そんな事をまさに思った瞬間だ。
突如自分を抱えていた腕はその仕事を放棄して、無情にも解放された身体はストンと落下したのだから息が止まった。
それでも構えた様な衝撃は体に感じず、寧ろ……
柔らかい。
あ、
「ベッ……ド?…っ!!」
「ご名答、」
いや、御名答じゃねえよ。
明かりのない視界の悪さの中、半信半疑にも得た感触で自分の置かれた家具を言い当てればだ。
次の瞬間には真正面から押し倒されて、更には馬乗りに跨ってくるこのシルエットは吐季だろう。
暗闇に目を慣らせば徐々に薄らとその表情は確認出来るけれど。
多分……笑ってる。
うん、いつもの笑み。
いや……もしかしたらもっと性質の悪い笑みかもだけど。