羊だって、変るんです。
「緊張を解す方法は人それぞれだから、小鳥遊の中で一番強力なヤツを実践してみれば?」

仕事中のような真剣な杏奈に、自然と手を貸したくなった自分に苦笑する。

「強力なやつ・・・空手の形ですかね」

出てきた想像の斜め上の回答に、飲んでいた焼酎を噴出しそうになるのを寸での所で我慢する。

「それは拙いだろ」

猫を被っている事は知っていたが、緊張を解す一番強力なのが極自然に空手の形だと言う事は、相当な手練れなのだろう。

『予想の斜め上の回答だな・・・しかも本人が隠していただろうに、それすらも気付いていないとは・・・』

チラリと杏奈の顔を見れば、やはり気付いておらず、真剣な表情で考え込んでいる。

「ですよね・・・。素数を数えてみるとか」

『・・・・』

絶句した後、何とか言葉をひねり出したが、棒読みなのはどうにもならなかった。

「・・・マァ・・ガンバレ」
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