羊だって、変るんです。
「実家に連れて行くそうだな」
下げた助手席の窓の方に身を乗り出して二人を見るが、背が高すぎて顔が良く見えない。
「はい。両親に紹介したいので」
見合いの経緯を知っているだろう慧に、遠まわしに話す事もないと、そのまま伝えた。
「こちらには挨拶無しか」
「それは・・凱に任せてますから」
慧は皮肉っぽく言っているが、悪い人では無いと分かったのでイラつく事も落ち込む事も無かった。
「凱を頼んだぞ」
「任せてください!」
何時も通り余裕の顔でそう話す慧に、杏奈も普段のノリで言い返す。