羊だって、変るんです。
「素敵な家だね」
仏間の手前の部屋に荷物を置いた後、廊下から中庭を見渡して凱が呟く。
「古くて不便な事が一杯あるけど、私も好きなんだ」
嬉しそうに笑いながら、中庭へ続くガラス戸を空けて、沓脱石(くつぬぎいし)の上にある下駄を履いて庭に下りる。
そして、その横にあった、大きめの下駄を凱の為に沓脱石の上に揃えて置いた。
綺麗に手入れされた池の有る中庭には、優雅に鯉が泳いでいる。
石灯籠も置いてあり、風情がある。
カラッとした秋風が通り抜け、都会とは時間の流れが違うように思え、ゆったりした気分になる。
そんな中、道場のから、元気のいい子供たちの声と、指導する大人の声が響いてくる。