羊だって、変るんです。

「あ、ご飯!」

時間の流れを忘れて中庭を眺めていた凱の耳に、杏奈の情緒の無い言葉が入って来た。

「そう言えば出来てるって言ってたね」

「うん。お昼食べてから来るより、こっちで食べた方がゆっくりすると思って、途中で電話してたの」

素早い動きで廊下に戻り、凱を急かせて居間に向う。

廊下は全ての部屋に面しているからどの部屋にでも行ける。

あっと言う間に杏奈が反対側にある居間に居た。

後を追って居間に入ると、美味しそうな料理が机に並んでいて、さっきまで空腹を感じていなかった凱まで、空腹を感じた。

「お母さんありがとう!頂きます!」
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