羊だって、変るんです。
ゆっくりと歩き出すが、頭の中は真っ白で会話も出来ず、いつの間にか先程話していた八百屋を通り過ぎようとしていた。
「杏奈ちゃん、その男前、彼氏かい?」
「!?」
声を掛けられて現状を思い出した。
「え、・・うん。私には勿体無い位のいい男でしょ!」
照れ隠しにふざけた口調で紹介する。
「あら、杏奈ちゃんも可愛いんだからお似合いよ」
楽しそうにおばさんが笑う。
「ありがとうございます。杏奈は僕には勿体無い位のいい女ですよ」
仕事用とも家用とも違う色気のある笑みで八百屋のおばさんに笑いかけると、一瞬頬を染めて言葉を失った。