羊だって、変るんです。

いつの間にか向かい合った状態になって、開いた口に凱の舌が侵入して来る。

「ふ・・ぁ・・」

何か言おうとしても言葉にならず、頭がぼうっとして体から力が抜けていく。

立っていられなくなり、凱の浴衣を必死に握り締めるのも精一杯になった頃、凱とのキスが終わった。

経験不足の杏奈は、酸欠に陥り、肩で息をしながら凱にもたれ掛かる。

「可愛くてつい。ごめん・・止められなくて」

申し訳なさそうに眉を顰める凱に、何か言いたいのだが、立っているのもやっとだ。

『もどかしい・・私に経験があったら』

キス一つでこれでは、先が思いやられる。
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