陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
+
「ん。ちゃんと厚着してきたな」
彼は階段の下で私を待っていた。言われた通りにジャケットを着てマフラーを持ってきた。
十月も終わりの今、常用するにはまだ微妙な時期だけど、帰りが遅くなったりするからもう出してあった。
「これ」
白と茶色のチェック模様に、幾筋かのピンク色のマフラー渡すと、黎明の吸血鬼は面食らっていた。
「男の人サイズの服はなくて……ないよりはマシかと」
言い訳をする私を見て、黎明の吸血鬼はまた軽く笑った。おかしそうに。
「ありがと。借りるよ」
受け取り、首に巻きつける。そのまま手を差し出して来た。
「近くに公園あったから、そこに行こうか。道端で話してるのも難だし」
「うん」
嬉しい。
どうしてか、黎明の吸血鬼の一挙手一投足が嬉しい。私は肯いてその手を取った。
自分はどんな顔をしているのだろうか。黎明の吸血鬼にはどう見えているのだろうか。
笑っているの、かな?
「さっき起きる前にあったこと、ちゃんと憶えてるか?」