陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
「と言うか……今何が起きている? あれ? 黎どこにいんの? 目の前が真っ暗で……え? 私目ぇ瞑ってる?」
「……さらにお前は鈍くさいようだな」
「どういう意味だおい」
「勝気なとこは好みだ」
「………。私はどうすればいいの」
「嫌なことは嫌って言えばいい」
そっと、肩を押して体を離す。急に瞳に入って来た月明かりが眩しかったのか、真紅は目を細める。
「今――真紅が俺に抱(いだ)いているのが好意だったら、それは真紅の生存本能がそうさせているだけだ。俺はそれに乗じて真紅を――弄んでるだけかもな」
アパートを出てからずっと手や肩と、真紅に触れていた手が離れた。
「真紅が天命待って死ぬときに逢いに行く。それまで、ちゃんと生きろよ」
「れ――
「生きて恋して、生涯の伴侶を持って、子に恵まれて、俺が憧れるような生き方をしてくれ」