陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
「どうだっていいだろ、そんなこと。誰が強かろうと、俺が護るべきは白だ」
「いや、まずは家と紅緒様を護ってやれよ。俺は自分でどうにかできるくらいではあると思うぞ?」
眉をひそめて言うと、何故か黒がうなだれた。
だがいつものことで、すぐに復活する。
「……ま、いい。取りあえず、真紅には逢ってくる。じゃないと、母上が真紅にかけた封じが解けたとき、一斉攻撃を喰らいかねない」
紅緒様の絶大な霊力の守護で、真紅の存在は妖異には知られていない。
しかし、十六歳の誕生日、その守護の効力は切れ力をなくし、紅緒様は目覚める。
十六年前に真紅が生まれた時刻になれば。
守護が一気に解けたとき、妖異は真紅の存在に気づくだろう。
甘美な血を持った、現状ではなんの力も持たない少女。
「当面は、涙雨についていてもらうつもりだ。あんな形(なり)だが、強いからな」
「涙雨殿なら心配も少なくなるか……現状、真紅嬢は見鬼(けんき)でもないんだろう?」
「ねえな。涙雨のことも、今は黒い小鳥としてしか認識できないはずだ」
涙雨――黒の式。
「……紅緒様の封じが解かれたら、真紅嬢は見鬼になるのか?」