見上げてごらん、夜空に輝くあの星を
「終わったー!!!!」

その言葉が部室の中に広がったのは、もう日が暮れ始めた黄昏時だった。

「やっと片付いたな...でもまさか3日連続で片付けで半日を使うとは思わなかったぞ」

俺は引っ越した日に結局面倒くさくなって整理を投げ出してしまったのだ。次の日に大量のしなくてはならない作業を残してしまったのが仇となる、余計に今日は疲れた。

「まぁまぁ、それはもう言わない!」

春乃がかわいく人差し指同士を交差させて口の前に出す。

(だからそういう仕草はやめてくれって....)

少し小恥ずかしさを感じ、思わず顔を逸らす。その様子にすぐ横にいた琴吹の目がこちらを睨んでいたように見えたのは気のせいだろう。そうだ、気のせいだ。

「さて!明日から部活開始ね!今日はみんなありがとう!」

「さて、帰るか〜」

慎一が、背伸びをしながら俺たちに呼びかける。

「そうだな、帰ろうぜ。このままずっと残っててもやることないしな」

俺の同意の言葉を聞き、春乃も慎一も頷く。琴吹の顔を見たら本能がまずいと教えてくれたので、そのまま振り返って昇降口へと向かった。







帰宅すると、俺は真っ先に母さんの元へ駆け寄った。

「母さんってうちの高校の卒業生なの?」

「今更?てっきり私もう気づいてるかと思ってたわ。というか父さんに言われたりしなかったの?一緒の高校だったって」

「だって関西の大学だってことしか聞かされていなかったからてっきり高校もあっちだったんだと思ってたから。でもやっぱりそうか...じゃあやっぱり天文部だったんだ?」

「よく分かったわね。でも同じ高校じゃなかったら多分父さんと出会ってないの。知ってると思って言わないでおいたんだけどね、盲点だったわ。私は確かに天文部に所属してたけど、どうしてそう思ったの?」

ああ、今思うとやっぱり父さんは高校で母さんと出会ったんだ。どうして何も思わなかったんだろう。

「俺今日から天文部に入ることになったんだけど、部室が散らかってて部活もメンバーで片付けることになったんだ。それで、片付けている途中にたまたまプラネタリウムの投影機を見つけたんだ。その裏に41期生って書いてあったから、もしかしてと思ってさ」

「なるほどね。私は41期卒業生だからその通りよ。投影機かぁ、懐かしいわね」

「それなんだけど、これからの活動で使う機会があったら借りてもいい?」

「ああ、そんなことね。貸すどころかそれあげるわよ。メンバーの中で使ってくれると逆に嬉しい限りだから」

「え、いいの?じゃあ使わせてもらいます」

その一言に軽く頷くと、微笑んで言った。

「でもそっか、涼磨が天文部かぁ。母さん嬉しいな。息子が後輩なんてさ」

正直そんな風に言われると照れるというか反応に困ってしまう。思春期男子あるあるだろう。母親にそういう言葉をかけられると無性にむず痒く感じてしまう。

「ま、まぁありがたく使わせてもらうよ!俺、部屋戻ってるから、夕飯できたら呼んで!」

結局その状況に対応する術がなく、部屋に小走りで戻ることにした。


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