大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「そうか。
アヤも寂しいと思ってくれたか。」

大王は私の髪を優しく撫でる。

「さ、夕餉を食べよう。」

大王は、私を離して膳の前に座る。

私たちは久しぶりに二人での夕餉を楽しんだ。

「大王、今日は月がありませんから、
星が綺麗ですよ。
庭に出てみませんか?」

私が言うと、

「では、暗いから、そこまでだぞ?」

と大王は言った。

松をつけると星が見えなくなってしまうから、私たちは、暗いまま庭に出た。

満天の星が瞬き、天の川は煌めく水面のように輝いていた。

「アヤ、寒くはないか?」

大王はそう言って、私を抱き寄せる。

「大王の腕が温かいから、大丈夫です。」

私は身を寄せて、大王の胸に頭を預ける。


先日、立冬を迎えた。

晴れた日の夜は初霜を呼ぶ。
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