大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「アヤがこのように俺を思ってくれる事が、
こんな嬉しくて、こんなに苦しいとは
思わなかった。」

「苦しい?」

「ああ。
このように愛しい者を残して戦に赴かねば
ならない。
アヤに寂しい思いをさせなければならない
のが、とても苦しい。
だから、俺は必ず帰ってくる。
これ以上、アヤに苦しい思いをさせない
ために。」

「大王………」


「………それから、アヤの護衛にハヤを付ける
事にした。」

「大王!?」

「俺がいない間、アヤを命懸けで守ってくれる
のは、あの者しかおるまい?
アヤもいろいろわがままを言い易い
だろうし。」

「私はわがままなど言いません!」

私が拗ねると、

「くくっ
その方がアヤらしい。
泣くぐらいなら、そうやって怒っておれ。」

と大王は笑った。
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