大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「おはようございます。」

私は、少し拗ねて答える。

「くくっ
まさか、アヤからの口づけで目覚める日が
来るとは思ってなかった。」

大王はご機嫌だ。

「大王は意地悪です。
気づかぬふりをしてくださればいいものを。」

私がそっぽを向くと、

「………アヤ 」

大王は私の耳元でそっと囁く。

「すまなかった。
あまりにも嬉しくて、舞い上がった。」

私は答えない。

「次からは気づかないふりをする。
約束だ。」

私は振り返る。

「ほんとに?」

「ああ。」

大王は大きく頷いた。
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