THE FOOL





「せ、芹ちゃ__」


「ふっ・・うぇ、・・さみ、寂しいぃぃ・・」


「っ・・えっ、ちょ・・・」


「すて、捨てられ・・・お父さ・・お母さ・・ん・・・」


「芹ちゃん・・・・」


「っ・・・・・茜さん・・・」


「・・・・・」



まるで迷子の子供の様だ。


それとも、壊れた玩具に泣く子供?


もう自分の手に戻らない、元の形に戻らないそれに諦めきれなくて、それでも戻らないと分かっているから悲しくて。


今まで手元にあった楽しい記憶が強いがために、突然失った寂しさに対応できない。


今まで持っていた数少ない物を奪われ裸で投げ出された様な感覚に、必死で気丈に見せていたけれど与えられる甘さの刺激に見事崩れて本音が出た。


寂しい、泣きたい、縋りたい・・・・。


そう思った時には雛華さんの体を引き寄せて背中に腕を回してしまっていた。


準備も構えも無く引き寄せられた体が私の体に体重を預けて、自分の顔を雛華さんの胸に寄せる。


子供が誰か安心できる人に縋って泣くような行為。


だから羞恥心も無くそうして雛華さんをしっかりと捉えてしまえば、さすがに少しの間不動になる彼の姿。


顔は見えない、それでも響いた声で驚きは伝わった。



「・・・芹・・ちゃん?」


「・・・っ・・すみませ・・・・うっ・・・甘えさせて・・・・」


「・・っ・・・・」



言ってすぐに更にその腕に力を込めて雛華さんのぬくもりを求める。


もうその場所や格好や自分達が置かれている状況、もっと言えば消し忘れていたTVの音声さえ意識に無くて。


むしろそのTVに意識が走ったのは、やっとモゾリと体を動かした雛華さんが片手で私の体を抱き寄せたままリモコンに手を伸ばし部屋を静かにした事でだ。


TVが消えれば確かにさっきまで雑音に充ちていたのだと理解する。


そうして耳に静寂を捉え、次に自分の泣き声、次に自分の心音。


そして最後に雛華さんの心音を僅かに感じ、ようやくリアルになってきた頭で自分が大胆にもさっきの雛華さん以上にその距離を縮めたと感じてしまった。


密着する胸はバスローブがはだけて素肌の物だし。


自分だって乱れたそれのままで肩や胸元が際どく露わになっている。


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