THE FOOL
ヤバい・・・感情に落ち着きが見えてきたら今度は別の感情で動悸が速まりそう。
そう、泣きつくまではそれこそ無我夢中で出来たけれど、泣きやみ方が分からない。
どういうタイミングで、どう顔を見て、どう離れたらいいのか。
子供の時なら甘やかしてくて大人の諭すような言葉に頷き頭を撫でられ終わった様な気が。
でも、今は子供じゃない。
今は自分で引き際を決めなければいけないんだ。
もう涙は止まったというのにそのタイミングや仕方を探って未だに雛華さんの胸に顔を埋めてしまう。
早く離れないと、なんだかくっつきたいが為に嘘泣きしているあざとい女の子の様だ。
せめて背中に回していた腕だけでも緩めようかと僅かに力を抜き始め、バスローブに広げていた指先の皺を伸ばし始めれば、
「・・・っ・・」
逆にキュッと私を抱きしめた雛華さん、それによって更に密着度が増した体に心臓が強く跳ねてしまった。
もう泣いてません。
そう宣言すべきだろうか?
とりあえず・・・服を直したいと言ってみようか。
それを理由に離れる事も出来るし一石二鳥だと自分の答えに満足し、まさにそれを告げようと口を開き僅かに顔を上げた。
ほぼ同時。
すでに肩からずり落ちていたバスローブが更に下ろされ、晒された背中に這う雛華さんの指先と多分指輪の感触。
その指先が背中で留めてある下着に絡んで明らかに外しにかかった瞬間にさすがに俊敏に顔あげた。
絡んだのは特に悪びれた様子も無い無表情。
どういうつもりかと見上げていればあっさり返されるその言葉。
「・・・・これ、どうやって外すの?」
「教えません。・・・ってか、外そうとしないでください」
そう言って自分の片手を背中に回し雛華さんの指先に絡んで牽制する。
そうすれば何故そんな事を言われるんだろう?的な表情で覗き込んだ彼の的外れな言葉の返答。
「あっ、脱がせてもいいよね?」
「いや、確認取ってない事を責めてたわけじゃ。それに何ですでに断定なんですか?『よね』?」
何故当たり前の様に裸を晒す事になっているのか。
この数分での彼の思考の動きを見てみたいものだと思ってしまうほど。