THE FOOL
私が意識を手放す直前に捉えた色彩。
青いハンカチを押しあてられ意識を手放した記憶にその呪文の様な薬品名が見事重なり理解する。
「・・っ・・・まさか・・・それを私に?」
「ん?」
分かってはいるけれど確認の言葉を彼に投げかければ、本の視線が私にスッと移り、まるで子供の様なあどけない眼差しが私を見つめた後ににっこり笑う。
「うん、使ってみたかったんだよね~」
「つ、使ってみたかったって・・・・」
「凄い凄い、知ってた?この効果。数時間で目覚めるかと思ったらさ、芹ちゃんほぼ1日は眠ってるんだもん」
凄いよね~。と、これまた軽い口調でその手に薬品の小瓶を手にしている姿を唖然と見つめ上げる。
いや、思考はすでに捉えてる視界には働かない。
むしろ言われた【1日】にフル可動だ。
1日?
眠って?
つまりあの出来事は昨日の事で、もう今日は翌日で・・・。
「っ・・・・バイト・・・・サボってる・・・・」
我ながらなんて悲しい第一声。
そんな状況じゃないというのに一番に懸念が働いたのが自分の生活に関わる事だなんて。
なんて悲しい20の思考。
自分の人生に軽く嘆き始めた瞬間にフッと気がついた次の懸念。
バッと自分の服を掴みその感触の健在に安堵して息を吐く。
だけどその行動がどうやら雛華さんの興味を引いたらしい。
本に集中していた視線がこちらに移され、すぐにキラキラとその眼を揺らして覗き込む。
うっ、しまった。
そう思っても後の祭りらしい。
「何?何何?その反応?何を感じてそんな慌てたの?」
「い、いえ、単なる自意識過剰ですから・・・・」
お気になさらず。
そんな感じに視線を外したというのに、デジャブ。
再びしっかり顔に巻き付いた指先が私の視線を無理矢理戻す。
そうして見降ろすのは無邪気というよりはいじめっ子に近い子供の眼差し。
「・・・・言って」
ゾクリと鳥肌が立つ感覚。
これは似たようなものを感じたことがある。
ああ、茜さんだ・・・・。
茜さんもこうやってよく私を追い詰めて、それに対して私は逆らう方法をまだ知らない。