THE FOOL
完全にお手上げの困惑に我関せずで私の顔を覗き込み、ようやくその顔の距離を離した雛華さんが腕を組んで見降ろしてくる。
相変わらず跨ったままの態勢で、逃げる事叶わないこの状況に私は畏怖していいんだろうか。
いったい何がしたいのかとただじっとその綺麗な顔を見上げてしまうと。
「・・・コレが誘拐された人間の第一の反応かぁ」
「・・・・・」
「うん、取り入れた知識とは異なる結果が見れるのも実践の醍醐味だね」
そう言ってなんだかそのグリーンアイを生き生きと輝かせる姿に私はどう返せばいいんでしょうか?
ちょっと待って?
今さらっと誘拐とか簡単に言っていたし。
しかもそれを犯罪とも思わない軽い感じに口にしたよね?
全く理解できない言葉の羅列と雛華さんの行動。
なのにあの会社で見た時よりもその表情が生き生きとしているのは気のせいだろうか?
「ねぇ、今どんな気持ち?不安?泣きたい?恐い?どんな負の感情で充ちてるの?」
グッと再び体を折り曲げ私を至近距離から覗きこんだ彼が、今度は目に見えて生き生きと興奮したように口の端をあげて矢継ぎ早に声を響かせる。
それにビクリと反応しつつも最初の様な恐怖心はやや薄れつつある。
だって、
これは、
まるで・・・・。
好奇心旺盛な子供の反応。
「・・・こ、・・困惑・・・でしょうか」
なんとか声を絞り出し今一番に浮かんでいる感情を口にすれば「なるほど~」なんて妙につやつやした表情で納得する彼の姿。
これは・・・もしや・・・・、
「パターン1として、被験者の感情は困惑ね。ふぅん、それは・・・どんな困惑だろう?もっと細かく説明してくれると嬉しいんだけどな」
彼のグリーンアイが悪戯に揺れるのに、茜さんの言葉が同調した。
「・・・・・探求心」
得た答えをポツリと口にしてみる。
それでも興奮しているらしい彼の耳にその声は入っていなかったらしく、おもむろに近くに開いたまま置いてあった本を手にするとそのページを見つめて首を傾げる。
「うーん、ここに書いてある恐怖心が見られなかったのは少し期待外れだけども。・・・・それにクロロホルムも思ったより効果が強い」
その言葉に浮かぶのは青。