目を閉じたら、別れてください。

「ああ、最近体調悪いんですよ。今度の試着は、俺も休んで付いていきますんで」
「そうか。じゃあ叔父として賭けよう。次も桃花はいかない」

パソコンのモーター音が響くほど静まり返って、俺も顔を上げる。
すると、斎藤専務は少し困ったような顔で首を傾げた。

「君は、きっとまたどこか間違えていないか?」
「……間違えるなら、彼女の方じゃないですか」

淡々としているし、嘘が上手い。
けれどそばにいても飽きない。最高の相手だと思っている。

「うーん。君のその様子じゃ、まだ危機感ないんだね」
「ドレスだけでしょ。ほかの式の準備は順調ですし」
「ドレスだけ、ね。彼女、最近残業も進んでしてるのにね」

斎藤専務が、俺に何を言いたいのかわからず、手を止めた。

俺と桃花は確かにすれ違っていたが、俺はちゃんと気持ちを伝えた。
多少強引ながらも、結婚までやっと漕ぎつけている。
このまま入籍して式をして、気が変わらないうちにさっさと一緒に住んでおきたい。
だから、邪魔をされたくない。


「君、もう一回後悔したいかい?」



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