目を閉じたら、別れてください。
「……分かりました。桃花に何か隠し事をしているか聞いてみますよ」
「早く頼むよ。好きな少女漫画がドラマ化したのに、全く見ようとしないほど忙しいのか――気落ちしているんだから」
「ああ、忙しいかもしれない。まかせっきりにしていたかも」
USBカードを返し、訂正はないことを告げた。
すると、斎藤専務はまだ愚痴りたそうな顔をしている。
「最近のドラマは、もう少し漫画に沿ったキャスティングをしてほしい。平凡ヒロインに、モデルを起用して。可愛い過ぎる上に、大根役者だ」
「ふうん。モデルを敢えて起用したなんて、よほど人気の人なんですね」
ただの会話だと思っていた。専務は、恋愛ドラマや小説、漫画も結構読むと言っていたから。
あのに帰ってきた言葉に、固まってしまう。
「ああ。風邪薬のCMのモデルだよ。色素の薄い、色白美人で、気が強そうな感じの」
「奈々子か。演技は確かにできなさそうだな」
別れた後も、頻繁に街中やテレビの中で見てしまうのは少しだけ違和感がある。
が、見たところで別に特別に何か感情が湧き上がるわけではない。
「そうか。君は芸名じゃなくて本名を知っている仲なのか」