目を閉じたら、別れてください。

小さく咳をした桃花に、吉田が人一人分ぐらい離れるのが分かった。

浮気を心配する雰囲気ではないが、二人があっていたことは全く知らなかったし気づかなかった。
それにしても、俺の会社の近くの駅で会うなんて、危機感がなさすぎる。
有らぬ噂を立てられたり、無粋されたりしてもおかしくないのに、だ。

ただでさえ吉田は離婚したばかりな上に、大学時代から女関係はよくない。

二人を追いかけるのも疑っているように思えるし、格好悪い。
彼女の小さな咳が遠ざかっていくのを感じながら、俺は先に店に入っていくことにした。


そんなものだろう。結婚するからと言って、一から十までお互いを把握するのは困難だし億劫だ。

嫌な部分は全力で見なければ、それでいいと思う。


ただでさえ、結婚すると親戚づきあいだの家族計画だの、面倒なことが増える。

少しぐらいお互い自由にやるぐらいがいい。

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