目を閉じたら、別れてください。
『今日はそっちの駅の近くにいるから、駅で待ってどっかいく?』
『家でいい。じゃあ駅で待ってて』
『いいよー。駅内のドーナツ屋の中にいる。』
短いメールにレスポンスも悪くない。
メールの中では、何を見逃しているのか俺には分からなかった。
定時で終われることがほぼなかったが、今日は少し早めに切り上げて駅に向かう。
すると小さな咳が聞こえて立ち止まった。
ドーナツ屋で待っているといっていた彼女が、駅前の噴水広場のベンチで本を本でいた。
ブックカバーで隠しているが、あれは本ではなく少女漫画だった。
しかもキスぐらいしかない生ぬるい漫画。大人の恋愛漫画ならキスで終わるはずがはにだろってからかったことがあるが、『結ばれるまでの過程が大事なの!』と激怒されたころがある。
少女漫画は、結ばれるまでのハラハラ感が大切だと力説していたが、俺たちはそれがないことに気づく。
どっちかといえば、結婚に向けてからの方がいろいろと起こっている。
少女漫画大好きである桃花にとって、自分の恋愛はそれでいいのだろうか。
「悪い。待たせたね」
本を閉じるとともに、桃花が顔を上げるのが分かった。
「ごめんなさい。今日は進歩さんが来るから、さっさと済ませてしまいたくて」
起ちあがった桃花が駆け寄った相手は、吉田だった。
「急にアイツからって珍しいな」
「忙しいから私からも誘いずらいしね」