目を閉じたら、別れてください。
「お前、メイク崩れてねえ?」
バージンロードを渡り、庭から屋敷へ戻る前だ。
招待客が移動する間、入ってきた扉の前でスタンバイしないといけなかったのだが、彼が急にそんなことを言うんだから、慌てて顔を隠した。
「えええ、うそ。アイライン? パンダ? パンダになってる?」
「いや、そんなひどくねえけど、メイクの人呼んで直してもらえ。移動に時間かかるし」
「ひええ」
急いでメイクしてくださった人が駆け寄ってくれて、鏡を差しだされ確認したけど、メイクは乱れていなかった。
よくよく考えれば、メイクが崩れないようにと一時間以上かけたんだ。
泣いたぐらいでパンダになるわけない。
「もー、なんでこんな時に嘘つくの!」
さっき見直していたのに。せっかくロマンチックだったのに。
簡単に髪やメイクを整えてもらいながら、隣にいたはずの進歩さんを探す。
が、見える範囲に見当たらなかった。
「え、ちょ、進歩さん?」
慌てて探そうと駆けだした私の後ろで、館へ向かう道の扉が開かれた。
やばい。招待客が私たちにまた花びらを投げながら、お祝いしてくれる大事な場面なのに。
皆に見守られ、館に入ってから色打掛に着替えている間に皆が席に座って待つってことなのに。
「桃花」