目を閉じたら、別れてください。
「ぷっ」
扉が開いて、招待客の並ぶ道の真ん中に彼が立っていて思わず笑ってしまった。
「ちゃんとしたプロポーズをしていなかったって、一生言われ続けると俺も困るから」
そんな悪態をつきながら、真っ赤なバラの花束を持って、私の前に歩いてくる。
「お前が目を閉じるその日まで、ずっとそばにいさせてください」
今度こそ、化粧が落ちてしまいそう。
私は嘘つきで、あれもこれも嘘で、結婚だって面倒じゃないお見合いを選んだくせに。
――目の前の彼は、私に嘘は吐かない誠実な人だった。
意地悪だし、口は悪いし、誰よりも優しい人だ。
きっと私は日毎、彼への思いで溢れて、苦しくなる。
この百本のバラの花束よりも、気持ちはあふれて貴方を好きだと叫ぶだろう。
何もかも足りないぐらい、彼が好きだ。
「私が目を閉じても、離れないで」
我儘を言うと、彼はまた面倒くさいなって言いながら嬉しそうに笑った。
「これからも面倒くさいと思う、あなたが好きだから」
そういうと、彼は幸せそうに私の頬に口づけしたのだった。
Fin


