目を閉じたら、別れてください。

まあこんなかわいい子が恋人の一人や百人いないわけないわな。

私はお見合い相手の彼の存在にときめいてはしゃいで、それを偶に思い出して夜中一人、呻きながら布団の上をのたうち回っている。
それに彼以上に好物件なんて出会えたことがない。
なので、この先ずっと一生一人な気がする。

私のこの無頓着で男っ気なしの性格を心配した叔父さんからのお見合いだったし。

「恋愛って面倒ですよねえ。もう神様がおでこに名前書いててくれたらよくないですか? あ、この人、私の名前書いてる、私のじゃん、みたいな」
「あー楽そう」
「名前書いてるなら、好きになっても諦めてくれるだろうし。あ、でも冷めたら消去して、違う名前書いて逃げたいかもお」
「泰城ちゃんも大概だね」

くだらないと笑いつつ、結局三杯もビールを飲み、締めに鳥雑炊まで平らげた。

泰城ちゃんは、彼氏が迎えに来てくれてそのまま車で帰り、私は駅まで酒を覚ましながら帰る。
二時間ぐらいしか経っていなかったので、外はまだ活気があるほうだ。

呑気にそんな風に思って夜風に吹かれていたら――携帯が鳴った。

彼ではなく、叔父さんからだ。

『桃花、すまんな。進歩には会ったか?』
第一声がそれで、そのまま切ってやろうかと思った。

叔父さんは、母の弟で自分だって未だに独身の42歳のイケメン野郎のくせに。
うちの母やおじいちゃんが年の離れた叔父さんを絢負かしていい大学に入れて、大切に育ててきたせいか、自由奔放で掴みところがない。

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