目を閉じたら、別れてください。
――

「会いに来ましたよ。新事業部の部長とか、ゆくゆくは副社長とか噂もお聞きしましたね」
『どっちの進歩で会ったんだ? お前が振り回した爽やかオオカミ少年?』
「本性の方ですね」

刺々しく返すと、電話越しに苦笑しているのが分かる。

『俺を責めるのは違うぞ。俺はお前がそんな嘘を言ってるとは思わなかったんだ』
「だって別れてくれなかったんだもん」
『お前なあ。……金曜はどうだ? そっちでご飯でも食べようか』

金曜と言われ、立ち止まる。
そうか。叔父さんと三人なら気まずくないのかな。
でもそれはそれでちゃんと謝罪できないのか。

「金曜は用事がある。土曜か木曜。お洒落なレストランではなく焼肉かお寿司がいいです。専務」
『容赦ないな。じゃあ空けとくように』
「はあい」

やった。
叔父さんは怖面だの強面だの言われてるけど、優しいし振り回しても全部受け止めてくれるんだよね。

うちは親が共働きだったのでよくおじいちゃんの家に預けられることがあったので、年の離れた兄のような感覚だ。
……知的で寡黙でっていうタイプのルーツを辿ると叔父さんにたどり着きそう。
理想の、結婚するのに一番安心するタイプだ。

『で、お前らはほんとうのところどうなんだ?』
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