目を閉じたら、別れてください。

私の返答に、彼女は長いため息を大げさに吐く。

「確かに御曹司で顔もよくてほどよくSっぽいけどぉ、私は彼氏がいるのでえ」
「そうだったよね」
「先輩も恋に燃えあがるような人ではないようですし、もし本当に彼がセンパイを好きなら妥協しとけばいいのにい」
「妥協……」


妥協って、彼に対して失礼すぎる。
だって私は平凡だし。たまたま叔父さんが専務で、おじいちゃんが土地持ってて此処の不動産にお世話になっていただけだし。

「なんか、まどろっこしいかもしれない」
「そうです、そうです」
「逃げたらだめだわ。はっきりしないと、罪悪感で焼き鳥も喉を通らない!」
「シュークリームは三つ目ですけどね!」

金曜まで処刑台に怯えるのも性に合わない。

どうせならもう、はっきりさせちゃおう。

「電話してくる」
「ゴーゴー!」

泰城ちゃんに火を付けられ、裏口から駐車場へ出る。
ここなら煙草を吸う輩がたまに出てくるだけで、少し離れたら誰も来ない。

そこで連絡しようと先ほどの電話番号にかけてみた。

ワンコール……。

………。

数回コール音が響いても、出ない。
段々と不安になってくる。いや、もしかしたらまだ休憩ではないのかもしれない。


一度切って、メールの方をしてみようかと液晶画面を見る。

すると、そのタイミングで彼が出てしまったのだった。

『もしもし?』
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