目を閉じたら、別れてください。
従業員の案内を断り、中を見渡して私たちを見つけると急にしかめっ面になった。
「呑気にチョコ食べてんじゃねえよ」
素の言葉に、泰城ちゃんが驚いて私と彼を交互に見る。
「チョコじゃなくて、チョコフォンデュ」
「うるせえ。俺にタクシーを使わせたバツとして、この後牛丼付き合え」
「は? 私お腹いっぱいだし」
「隣で見てろ」
泰城ちゃんがにやにや笑いながら、わざとらしくパタパタと手で顔を仰いでいた。
笹山は目を丸くしていたし、よっしーは飄々としていた。
「早く食べろよ」
「チョコが固まってるんです。というか、何で――」
なんで来たの?
そう聞こうとしたのに、声が出なかった。
それを聞いて、何を言われても私は赤面してしまいそう。
「さっさと食べろ。ウソツキ女」
「ちょ、チョコが固まってるのは嘘じゃないですからね」
それでもこのチョコだって、私の頬に触れたら簡単に溶けてしまいそう。
一杯だけ、お洒落ぶってカクテルを飲んで私の横に誰も寄せ付けないように、胡坐を掻いて座る進歩さん。
私の心に固まっていたチョコは、完全に液体になって蒸発して消え去ってしまっていた。