目を閉じたら、別れてください。


「汁だくだくで」
「お前も食べるのかよ」

「叙々苑に行きたいのを我慢して、牛丼に付き合ってやってるんだから黙ってて」

「明日は叙々苑行く?」

彼は大盛りの牛丼の前で、上手に割り箸を割ってから何気なく次の約束をしようとしていた。
飲み会も、彼の頼んだ一杯で帰る雰囲気になったし、そもそも彼のせいで集まった飲み会だったのでさっさと解散した。
私だってあと数杯は飲めたのに、この満たされない部分は食べないとやっていけない。

「明日は約束があるんですー」
「ああ、俺との約束は金曜だったな」
「……うー」

並んで牛丼食べて、酔ってたら急いで来てくれて、好きではないけど元婚約者で、昨日寝た相手。
心のチョコレートを溶かすけど、嫌な奴。タイプと正反対で、嫌味でしゃべり方が乱暴。

なのに、よっしーのあの駆け引きの連絡で動揺して来てくれたのかと思うと、顔がにやけてしまう。

コントロールなんてできない。

「……私がザルだって忘れてた?」
「昨日は酔って、散々メールよこして俺の携帯の電池を食いつぶしただろうが」
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