目を閉じたら、別れてください。


すぐに気づいた。
これは私にわざと聞かせている。分かりやすいぐらいの挑発だ。

「待たせたね」
テーブルを避けながら入ってくる叔父さんに、本を閉じながらゆっくり振り返る。
「惜しい。あと数分遅かったら、犯人が分かったのに」
「少女漫画でショ」

急いで来てくれたのか、前髪を掻き上げる姿がセクシーだ。
そのセクシーポーズの叔父さんの後ろで、私の方を見ているのが、さっきの声がうるさい女たちだ。
叔父さんに気づかれないってことは違う部署なのかな。

「何食べるって言ってたっけ」
「お肉。叙々苑」
「全く。今日は尋問だというのに」

さり気なく私のドーナツのお盆を下げてくれるので、ちらりと私を睨んでいる二人組を見た。
なんだ。大したことないじゃないか。うちの泰城ちゃんの方が若くて可愛い。
私ではないが泰城ちゃんが勝ったことに優越感を覚え、鼻で笑ってやった。

「ここから一番近いとこは、あそこか」
「わーい。叔父さんの奢り奢り」

腕を組んで寄り添うように甘えると、まんざらでもないのか叔父さんも嫌がらなかった。
だが、私の内心は心穏やかではなかった。
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