難病が教えてくれたこと
第15話
【中矢裕side】
時が流れあれから5ヶ月。
暖かい季節…というわけでもなく、生ぬるい風が吹いている季節。
…8月です。
もう臨月になった李那。
元々入院しているからなんの心配もない。
「…暑い。」
「クーラー効いてるよ?」
李那のお腹はすごく大きい…
突っついたらパンクするのでは…
「あー…暑い…溶ける。」
俺の隣でブツブツ文句を言いながら軽く歩く李那。
今は廊下でゆっくり歩いているだけだ。
「…下も見えないし、怖い。」
最初は歩くのを渋っていた李那だが、もう慣れたのか普通に歩いている。
「あーもう、いつ出てくるのかな?この子は。」
お腹を優しく撫でる李那。
「さあ、どうだろう。」
同じように李那のお腹に手を当てる俺。
「あ、そう言えば裕くん、センター試験とかは?」
「終わってる。」
介護士になる。
資格もちゃんととった。
進路が速攻で決まった俺はあとは車校に行って卒業するだけだ。
…早いなあ、3年になったら…
いつの間にか俺も3年なんだよなあ…
しかも今年は蒼空と海澪ちゃんと同じクラス。
「おお、受かったんだね。」
「もちろん。俺を誰だと思ってる。」
「私のスパルタのおかげ。」
…はい。ごもっともです。ごめんなさい。ふざけました。
「まあとりあえず、お疲れ様だね。」
よいしょっと木陰のベンチに座る李那。
「こんなにお腹大きくなるもんなんだな〜…」
「当たり前じゃん。もう産まれるんだよ。」
「いつ出てくるかな。」
「それさっき私が言った、この子のタイミングで出てくるから分からない。」
愛おしそうにお腹を撫でる李那。
母親としての愛を充分注いであげたいんだそう。
「さて、部屋戻るか。」
部屋に戻るのはいいけど、最近李那が冷たい。
部屋に戻って直ぐに追い出されてしまう。
俺の代わりに李那のお母さんが来る感じだ。
「はい、じゃあまた明日。」
…ほら今日もこうやってすぐ追い出す…
もう慣れっこですがね。僕はもう慣れました。
【中矢裕side END】

【如月李那side】
「李那、出来たんじゃない?」
「んーん、もうちょっと。」
裕くんを追い出してからすぐに来てくれるお母さん。
お母さんに手伝ってもらいながら私は作品作りをしている。
元々家庭が苦手な私。
マンツーマンでお母さんが編み物を教えてくれている。
生まれてくる子供のために帽子と靴下を編んでいる。
産着はお母さんが作ってくれた。
ーズキッ…
…?
今なんかお腹痛かったんだけど…
まあすぐ治ったし、気のせいかな…?
「ねえ、ここって……うっ〜…っ…」
「どうしたの?」
「なんか…お腹痛い…」
「あら、陣痛かもねえ」
かもねえ、じゃないよお…
「まだ大丈夫よ」
流石3人の子どもを産んだ我が母親。
余裕の顔で編み物を続ける。
「普通にしてなさい。大丈夫だから。」
「…うん、わかった…」
「ほらもうすぐ完成よ。」
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