難病が教えてくれたこと
「李那、裕くん、先輩達。」
「あ、お母さん。」
「ご飯できたからいらっしゃい。」
「「ありがとうございます!!」」
…ほんとにこの2人はご飯食べに来たな…
前からよく入り浸る人達だったけど。
…まあ、そういう先輩達も嫌いじゃない。
【如月李那side END】

【中矢裕side】
珍しく李那が微笑んでる。
叶夢の前で笑ってるのとはまた違う笑顔だ。
くすくす笑ってる時のあの顔。
「じゃあ先輩達先に下へ…」
李那は俺を見て微笑む。
俺もそれを見て李那の元へ行こうとした。
「…如月、俺が下まで運んでいい?」
「…はい?」
「よし、運ぶわ。」
「ひゃあ?!」
…黒田先輩…
部活引退しても普通に力ありますね…
軽々と李那持ち上げちゃったよ…
「ふむ。軽いな。筋トレにもならん。」
「私で筋トレしないで!」
李那はなれない高さのせいか、涙目になってる。
俺、黒田先輩より身長低いからな…
黒田先輩身長高いから抱えられても普通に高いだろう。
怖いのか、李那は黒田先輩の服を力いっぱい握ってる。
「…はあ…怖かった…」
車椅子に静かに降ろされた李那は冷や汗をかいている。
「あはは。黒田先輩身長高いもんな。」
「高いなんてもんじゃないよ。怖い。」
俺はリビングまでの距離を李那と笑い合いながら向かう。
「おう、遅いぞ。」
…遅いって。
普通におして歩いてきただけなんですけど…
「まあまあ!」
「ん。叶夢。」
叶夢が匍匐前進しながら李那の方へやってくる。
「まあまあ〜」
李那は優しく叶夢を抱き上げて膝に載せる。
その様子を黒田先輩は肘をついてじーっと見つめる。
「それにしても…
叶夢、李那に似てるなあ…」
「…え?」
「いやあ、裕、って言うより李那、って感じなんだよなあ。
なんつーの?目元李那って感じ。」
…まあ、赤ちゃんの顔って変わるからな…
李那に似たらかっこよく育つわな…
性格は素直に育って欲しいよな〜…
「…そこまで考えたこと無かったな…」
李那は叶夢を抱き上げて目線を合わせる。
親子で見つめあってる…
「まま?」
「あ、今言えたね。」
「ぱぱぁ〜」
…叶夢が。
俺を…
パパって言った…
「ちょ、裕くん、なんで泣いて…」
李那は慌ててハンカチを出す。
「パパって…」
「うん、言ったね。」
ママって呼ばれた時もこんな気持ちだったんだろうか…
「李那〜…」
「嬉しいねえ」
叶夢も俺を見てニコニコしてる。
李那も同じようにニコニコして俺を見つめている。
「…ご飯…おいしい…」
…俺、カッコ悪すぎだろ…
泣きながら飯食うなんて…

俺の彼女、李那は難病持ちの女の子。
人生を諦めたこともあるけど、今こうして生きていてくれている。
< 175 / 200 >

この作品をシェア

pagetop