難病が教えてくれたこと
「いいだろう。但し条件がある。」
「「?」」
条件?
何時までに帰ってこいとか?
それとも無理はするな…とか?
俺の予想はその2つとも外れた。
「金魚すくいで金魚取ってくること、焼きそば買ってくること。」
…はい?
これが、条件?
「それと。」
「…何?」
さすがの李那でも呆れたのか言葉が刺々しい。
「全力で楽しんでくること。」
…まともなこと言うじゃねぇか。
「…いつ体が動かなくなる、とか考えるな。陸上で現役だった時のように全力で楽しんでこい。」
「うん…」
「よし、ならいいだろう。
あ、金魚と焼きそば忘れんなよ?」
…金魚と焼きそば好きなのか?
そういえばこの人、さかな好きだったし、昼飯とかよく焼きそば食ってるな…
だからか…
「…分かった。」
「よし、ならいい。行ってこい!思う存分楽しんでこい。」

そしてお祭り会場。
俺と李那は地元のお祭りに来ていた。
李那は目を輝かせてキョロキョロ探している。
俺もある出店を探す。
たぶん今探しているのは同じだろう。
「あっ…あった!」
李那の方が早く見つけたため、俺は出遅れてしまった。

「「射的!!!」」

恐らくお祭りに来て一目散に射的に向かうのは俺と李那くらいだろう。
ーパシュッ…ガコン!
「やった!また私の勝ち!」
「李那、俺お前をある種の天才だと思ったよ。」
「ええ…」
「なんでそんなに1発で倒すことができるんだよ…」
不思議でしょうがない。
李那は小さい頃から何でもそつなくこなす子だった。
勉強はかなり苦手みたいだけど。
ただこういうゲームみたいなのは昔から得意だった。
「いっぱい取ったねー!」
「…そんなに食えんのかよ…」
右手に射的の景品。
左手にいちご飴。
と、わたあめ。
甘いもの×甘い物の組み合わせだ。
「…太るぞ?」
「はっはっ、何を言っているんだい、病気によって体重が5キロも落ちてしまった私に。」
「今そのワード出すのどうかと…」
「だから、太ってもいいんだ!」
「話聞けや。」
射的の景品はかなりある。
李那の好きなぬいぐるみやなぜか扇風機。
最新のゲーム機。
「そんなに景品取ってどーすんの?」
「え?美那とか風雅君にあげるよ?」
とるだけ取ってただであげるとか…
優しい姉貴だな。
「もちろん、1000円くらいで。」
と思った俺が間違いだった。
そんなこんなでなんだかんだお祭りを楽しんだ俺と李那であった。
【中矢裕side END】
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