難病が教えてくれたこと
その子はそれを待っていたかのように俺の首に腕を回して俺と体を密着させてきていていた。
ーガラッ…
…最悪だった。
まさかこのタイミングで李那が来るなんて…
「…な、に…してるの?」
李那の頭は冷静だったと思う。
声は震えていたけど、顔は驚きを隠せていなかったし、何より怒っていたと思う。
「……そういうことなの?」
李那はその子に話しかける。
「そうですよ。如月先輩」
「違っ!」
「何言ってるんですか?!中矢先輩!私を押し倒しておいて!」
たしかにこの体勢を見たら誰が見ても俺が押し倒しておいて襲っているようにしか見えない。
だけど、違うんだ…
李那は傘を俺に投げつけると元来た道を戻って行った。
「李那!!」
「中矢先輩?!」
後ろでその子が叫んでいたが今はそんなの気にしてられない。
李那は傷つきやすいんだ。
芯が強くて我慢強いけど、傷つきやすい。
今、追わないと元には戻れない。
俺は荷物も全て持って李那を追いかけてダッシュした。
「李那!!」
「何?」
俺は家の近所で李那を捕まえた。
「あの、さっきの事だが…」
「あーいいよもう。浮気でしょ?あっちに行きたかったら行けばいい。」
李那の目は凄く冷たくて、ゾッとするほど恐ろしかった。
「誤解なんだよ…あの子がいきなりキスしてきて俺を倒してきたんだ…」
「…」
「信じてくれよ…李那…」
「…」
「俺は無実だ…頼む、信じてくれ…」
李那の目が段々優しくなってきた。
李那はまだ疑ってはいるが、信じてくれようとしている。
「李那…」
「もう、今回は許すよ…だけど2回目はないからね?」
「もちろんだ!」
良かった…信じてくれた…
だけど、この時の自分の潔白の証拠がない。
無論、襲ったという証拠もない。
だから李那は渋々信じてくれたんだろう。
李那は今でもまだ、この時のことを不安に思っている。
俺を信じきれてないんだ。
「ー…裕くん!」
「…あれ…?」
「裕さん、大丈夫ですか?」
いつからこうなっていたのだろうか。
と言うかここはどこなのだろうか。
「あの喫茶店で倒れたんだよ。」
「そしてここは俺の家です、迎えにこさせました。」
蒼空の家?
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