難病が教えてくれたこと
李那はバツが悪そうに目を伏せる。
長いまつげが影を落としている。
「…うわっ…」
「おっ…と…」
李那がバランスを崩し、すかさず受け止める。
「ごめん、最近多いんだ、こういうの。」
…症状が進行してるってことなのか?
李那本人だけ見てるととてもじゃないけど病気には見えない。
だってこんなに明るくて正義感が強くて優しい普通の女の子だもん。
なんでこんないい子が病気になってしまうんだよ…
恨むぜ、神様…
「…大丈夫か?」
「…ん…」
李那は大丈夫じゃなくても大丈夫と言う。
ある意味俺にとっては不安でもある。
「如月さん!」
「なーに?」
「文化祭の事だけど…」
クラスの委員である男子が李那を呼ぶ。
李那は俺から離れてそいつのところに行く。
「…李那、行っちゃったねぇ」
「おお…」
「寂しいねぇ、蒼空」
「おお…
…って何言ってんだよ!海澪!」
後ろを振り返るとニタニタしている海澪が。
「え、図星?」
「…」
言葉にしなくても分かる。
図星だ。
李那が俺だけを見てくれたらいいのに。
俺だけを頼ってくれたらいいのに。
…虚しいな。
「…そんなこったろうと思ってジュース買ってきた。」
「意味わかんねえ」
海澪はたまに訳の分からんことを言う。
「おーい!みんなー!」
クラス委員同士で話していた李那が全員に声をかける。
「なんだ?」
「どした?」
クラスの何人かが何事かとワクワクしている。
「放課後残れる人だけ残ってくんない?」
…ん?
「まあ、帰りたけりゃ帰りゃあいいんだけど、勝手に文化祭の事決めても文句言う筋合いないからね。」
「全くもー!参るよ委員長には…」
「乗せるのが上手いもんね」
周りの奴らが渋々と言った感じで苦笑してる。
確かに、李那は明るくて人を乗せやすい。
李那は人気者…である。
「よっしゃ、放課後文化祭のこと決めよーね!」
「「おっけー」」
クラスメイトが李那の周りに行き、色々案を出している。
李那はそれをまとめたり唸ったり。
「とりあえず放課後決めるから色々考えといて!」
…めんどくさい仕事を放り投げて俺らの所に戻ってきた。
「ただいまー」
「「おかえり」」
「なんで私が…」
そう言えばなんで李那がクラス委員になったんだっけ…?
「…決める時寝てたからじゃなかった…?」
海澪が思い出しながらポツリと呟いた。
…そうだ。
決める時寝てたんだ。李那。
そりゃ決定だわな、本人何も言わんから…
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