きらきら
放課後、約束通り草賀は部室に姿を現した。


当然のことだが、放課後なので他の写真部の部員たちも居る。


だから、わたしは彼もそう気安くは声をかけてこないだろうと思った。


それでも淡い期待を持ってこうして部室に来ている自分が、少し歯がゆく、部室の片隅にある椅子に座って雑誌を読んでいたわたしは、何度も彼のことをちらりと覗いていたが、彼のほうはというと、カメラの整備に熱中しているのか顔すらあげない。


周りの部員たちが声をかけると一言二言言葉をかわし、すぐに作業に戻るという繰り返しだ。


しかし、言葉数が少ないわりには、無愛想な感がまったくなかった。


どうしてだろうと考えたとき、彼が常に人と対面しているときに、笑っているからだと気づいた。その顔を見ただけで、彼の人間性が垣間見えるような気がした。


わたしも声をかけてみようか、と何度も思ったが、そもそもわたしは人と話すがあまり得意ではない。第一何を話せばいいかわからないし、今どきの高校生がそういった男女間でどういう話をしているのかもまったく知りもしない。


だからわたしにはこうして彼のことを雑誌越しに覗き見るしかないのだ。


そうこうしているうちに、あっという間に閉校の放送が入って部活の時間が終わってしまった。


今日の終わりを告げるチャイムを、わたしはただ呆然と聞く。


何を期待していたんだろう。


昼休みのことだって、草賀のお世辞だったかもしれないじゃないか。


わたしは未練がましい自分の心を戒めて、さっさと帰る準備を始める。


みんながそれぞれ帰宅の準備をしている最中、ふらりと草賀が部室から出ていった。帰るつもりなのかと思ったが、彼のカメラケースも学生鞄も部室に残されたままだ。トイレか何かだろう。そこまで考えて、逐一彼の行動を目で追っている自分に気がついて、わたしは慌てて頭を左右に振るう。違う、期待するなわたし。


十分もすると部員のほとんどは帰宅してしまって、残りはわたしと部長、そして部長の彼女の三人になった。


鍵を閉めようとする部長を見て、わたしは思わず「待ってください」と言ってしまった。


彼が戻ってくるかもしれないという期待を、わたしはまだ捨て切れていなかった。不思議そうな顔を浮かべる部長に、一人でフィルムの確認をしたいので、と適当な理由を並べて、「鍵はわたしが職員室へ戻しておきます」と言った。


部長は怪訝そうな顔を浮かべていたが、これ以上彼女のことを待たすわけにもいかなかったのか、部室の鍵をわたしに渡すと、戸閉まりだけきっちりするようにとだけ言い置いて、彼女と連れだって校舎を後にしていった。
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