なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 美味しいと笑顔で言ってくれたら、どんなに嬉しいだろう。


 朱熹は思わず口がにやける。


 餡餅は中身を色々変えられる。


酒のつまみに合うように、少し辛めの物もいくつか作る。


(喜んでくれるかしら……)


 朱熹は、鼻の頭に白い粉をつけながら、出来上がった餡餅を見て微笑んだ。


 約束通り、曙光は二日後に訪れた。


 朱熹は両膝をつき拱手の姿勢で曙光を迎える。


「堅苦しい礼はよせ」


「最初だけです」


 二人は微笑み合い、このやりとりなんだかいいなとお互い思うのであった。


 今宵、曙光は朝服ではなかった。


 かといって夜着でもない。


紫色のゆったりとした深衣を着ている。


礼服でも普段着にも使えるような恰好だ。


 いつものいかにも皇帝陛下といった出で立ちではないので、少し親近感が湧く。
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