なりゆき皇妃の異世界後宮物語
それでも醸し出される威厳のある風格は健在だ。


おそらく、根が真面目なのでシンプルな深衣を着ても溢れ出てしまう厳格さなのだろう。


「今宵は月を見ながらお話しましょう」


 朱熹はそう言って、いつも飲んでいる部屋の襖を開け放った。


 外には立派な庭園が広がっていて、黄金色に輝く月が煌々と輝いていた。


「うむ、涼しい風だな」


 曙光は脇息にゆったりと肘を預け、そよぐ風に目を細めた。


「あの、お約束の餡餅を作ったのですが……」


「おお、いただこう!」


 曙光の目がパッと輝く。


 楽しみにしてくれていたことが分かり、朱熹は嬉しかった。


 酒と一緒に餡餅を差し出す。


 曙光は、餡餅を一つ手に取ると、まるで宝石を光にかざすように目の前に持ち上げてしげしげと見つめた。
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