なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「よく俺だと分かったな」


「花を小石のように勢いよく遠くに飛ばせる者などお前しかおらん」


 曙光は呆れたように笑った。


「あまりにも無防備に突っ立てるから悪戯したくなったんだよ」


 渡り廊下の柵は、膝上ほどの高さなので、秦明は軽々とこえて曙光の隣に立った。


「大きなため息なんか吐いてどうしたんだよ、お前らしくない」


 見られていたのか、と曙光は少し罰の悪い顔を浮かべた。


「別に……大したことではない」


「なるほど、女か」


 秦明はニヤリと笑った。


 勘の良すぎる幼馴染を持つと面倒だなと曙光は思った。


「そろそろ我慢の限界が来ているのだろう?

もうあの方のことは諦めて、朱熹ちゃんとせっせと子作りに励むがいいさ」


「言い方というものを学べ」


 曙光は秦明を睨み付けた。
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