なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬無自覚の呪縛
 朱熹は珍しく苛々していた。


 それもこれも、曙光の煮え切らない態度のせいである。


 国のことも朱熹のことも大切にしているようで、いずれも中途半端だ。


(ああ、もう、こういう時は現実逃避するために本を読むにかぎるんだけど、府庫に行ったらまた陽蓮さんとの仲を怪しまれるかしら)


 朱熹の中では、どうして自分と陽蓮が不倫関係にあるように見えるのかさっぱり分からなかった。


(でもここで府庫に行かなくなるのも、これまで府庫に行っていたのは陽蓮さんに会うためだったと認めるようで癪だわ)


 陽蓮さんに会わなければいいのよ、と自分の中で折り合いをつけて、府庫に行くことにした。
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