なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬恋の花文
 曙光に、『しばらくここに来ないでください』と言ってから早十日。


 曙光は朱熹に言われたことを律儀に守り、訪れを絶っていた。


(まさか一生、会いに来ない気じゃ……)


 朱熹は感情に任せて言ってしまった言葉の重みを身に沁み、後悔していた。


 府庫には睡眠術の件を聞いて以来、行ってはいない。


 こちらにまったくその気はなくても、誤解されるような行動は慎むべきだと思ったからである。


 けれど、行っても行かなくても曙光はやってこない。


 自分が来るなと言ったから当然なのだが、来るなというのは来てという感情の裏返しでもある。


 恋する感情は、自分の思いとは真逆のことをつい言ってしまうもの。


 けれどその幼さが関係性を簡単に壊してしまうことに朱熹は気が付いていなかった。
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